より健全な育成環境を求めた沖合養殖と、海況順応対策
1.沖合養殖
魚介類の養殖は、それぞれの地理的環境を生かした最適な場所で行われます。波が穏やかで、水温の変動が少なく、病気も発生しない漁場が理想ではありますがそのような場所は多くありません。一方、黒瀬ぶりは天候の影響を大きく受ける沖合で養殖されています。これは、陸地から離れることで河川からの雨水流入による環境変化を最小限にし、魚にとってよりより環境で育成することを目的にしています。潮の入れ替わりが早く、水深が深く海水量が多いため、環境変化による魚のストレスは最小化されます。魚にとって最も好ましい環境は何かを突き詰め、沖合養殖にたどり着きました。
2.沖合養殖の厳しさ
沖合養殖は、黒瀬ぶりが育つうえで最良の環境ですが、大きな課題を抱えています。それは海況の厳しさです。陸地から離れることは、魚が育つうえでは好ましい環境ですが、育てる人間にとっては非常に厳しい環境です。陸に近い静かな環境であれば、荒天の影響を回避することはできますが、黒瀬ぶりの育つ漁場には波風から魚を守ってくれる自然の要塞はありません。夏の台風、冬の季節風などでの海況変化が大きく、生簀に近づけないという状況も多くあります。そのような特徴的な漁場で養殖を行うことは事業としてのリスクはありますが、高品質なブリを育てるため、この漁場が最善の場所と考えています。
3.浮沈式生簀
海況の厳しい漁場でブリを育てるため、その環境に順応できる生簀を使用しています。この生簀は海中に沈めることができ、黒瀬ぶりに餌を与える時以外は水深10mの深さに沈んでいます。これは、荒天時に起こる波浪が水中では大きく軽減される作用を利用しています。沖合であっても、安定した水面下10mに係留することで、ブリの遊泳や、設備に大きな負荷をかけることなく乗り切ることが可能です。この機能を備えた生簀を導入する以前は、荒天による被害を受けることがありましたが、現在はその影響は大きく軽減され、黒瀬ぶりの生産量安定に寄与しています。