採卵技術・育種

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早期採卵による需要の開拓、複数採卵によるリスク分散、育種

1.早期採卵技術

黒瀬ぶりの採卵は、親となる魚を収容した水槽の水温、日照時間の調整で制御されます。本来、天然のブリは2~3月に東シナ海で産卵しますが、黒瀬ぶりは成熟の制御技術により、産卵時期を前倒しすることができます。最大で約6か月前倒しすることが出来るため、天然稚魚を漁獲する養殖スタイルよりも6か月早く育成を開始することができます。育成開始時期の前倒しは、出荷開始時期の前倒しに繋がり、養殖ブリの供給が少ない時期に高品質のブリをマーケットへ供給することができます。ブリは、日本では12月~1月が旬であり品質が安定し供給も多くなりますが、6~7月は品質が不安定で供給は大きく減少します。そのような時期でも早期採卵により誕生した高品質な黒瀬ぶりがマーケットに供給されています。


2.早期採卵による品質安定の取組

日本国内で養殖されるブリは地域による差はありますが、5~6月頃に産卵の時期を迎えます。この時期、ブリの生殖腺(卵巣や、精巣)は大きく発達し、産卵期の終了と共に退縮します。生殖腺の発達はブリの身質に大きく影響し、産卵期後の夏場は品質の悪い時期と言われていました。
この問題を解決するために、早期採卵の技術が開発され、産卵期の影響の少ない魚齢の若い黒瀬ぶりによるマーケットの開拓が始まりました。産卵期の影響を回避することで、周年通して安定した品質の黒瀬ぶりを供給することが可能となりました。


3.採卵技術確立による計画生産

採卵技術の進歩により、出荷時期から逆算した産卵時期の制御が可能になりました。年間に複数回の採卵を行うことで、育成期間の平準化、成長の季節変動を見越した採卵時期の調整、需要に応じた必要量の調整が可能となり、より品質の安定した黒瀬ぶりを生産できるようになっています。

また、複数回採卵を行うことでトラブル発生時のリカバリーが可能となり、生産数量を安定させることができます。種苗の安定生産が黒瀬ぶりの安定した市場供給を支えています。


4.育種技術

親となる魚の個別管理、遺伝情報の管理を行うことで、優良な形質を次世代に引き継がせる育種を黒瀬ぶりでは行っています。天然種苗を養殖する従来の方法では、次世代に形質を引き継ぐことはできませんが、黒瀬ぶりは優良な形質同士の交配を行うことで、次世代へそのバトンを繋ぎ、世代を重ねる毎に品質を向上させています。

遺伝的多様性を維持するため、研究所は親となる魚の血縁関係を全て網羅し、近親交配を避けることで劣勢形質の発現を防止しています。高成長性、抗病性、環境順応性など、ブリが生まれながらに身に付けている能力を探し出し、次の世代に繋げています。


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