環境・資源への配慮と、効率的な育成の両立
1.高摂餌飼料による育成
黒瀬ぶりの飼料は、稚魚から成魚まで、固形の配合飼料を与えています。固形の配合飼料は、他の飼料形態よりも摂餌率が非常に高いという特徴があります。摂餌率が高いため、漁場環境を汚染する要因の一つである、食べ残しによる海底への蓄積を大きく軽減することができます。食べ残した餌は、海底へ沈み蓄積を続けることで漁場環境を少しずつ蝕んでいきます。このブリにとって最良の環境を維持するため、食べ残しが少なく、ブリの成長に合わせた栄養がコントロールされた飼料を与えることで、環境環境が健全に保たれ、品質の高い黒瀬ぶりが育ちます。上質な飼料が、漁場環境とブリの品質を支えています。
2.黒瀬ぶりの成長に合わせた組成
黒瀬ぶりは稚魚から成魚まで、一貫して固形の配合飼料で育ちます。配合飼料のメリットとして、成長によって要求量が変化する栄養素を効率的に摂取することが可能となり、魚を効率よく、健康的に育てることができます。また、固形飼料は原料の配合を固定できることから、黒瀬ぶりの品質が安定しやすいという性質を持っています。また、この飼料が生産される過程の中で、原料を高温・高圧で処理することから寄生虫の発生リスクを大きく低減することができます。安全で安心な飼料が、黒瀬ぶりの品質を支えています。
3.浮力調整による高摂餌対応
固形の配合飼料は、海中でゆっくりと沈むよう浮力の設計がされています。黒瀬ぶりは海面に投下された飼料を水中で摂餌しています。生簀内を猛スピードで駆け回りながら餌を口へと運びますが、時には食べそびれてしまうことも。そのような時でも、ゆっくりと海中を漂うように沈む設計となっているため、生簀外へ流れ出ることが少なく、確実に黒瀬ぶりが口に運べるようになっています。魚類養殖にとって、飼料にかかるコストはとても大きなものです。そのため、与えた餌が黒瀬ぶりの成長に確実に繋がることが最も経済的メリットとなります。黒瀬ぶりの口に確実に飼料を届けることが、確実な成長に繋がります。生簀の外への流出が非常に少ないことから、漁場環境への負荷を大きく軽減することができます。
4.出荷前に与える特別な飼料
黒瀬ぶり育成の終盤、出荷前になるとこれまでとは異なる飼料に切り替わります。これは、出荷前の仕上げ段階に与えられる飼料で、トウガラシの粉末を練り込んでいます。ブリは、同類のカンパチ、ヒラマサよりも血合筋が変色しやすい性質があります。この課題をクリアするためにニッスイグループが開発した黒瀬ぶり専用の飼料です。血合筋の変色は、ミオグロビンと呼ばれる色素タンパク質が、酸素と結合することにより起こりますが、その見た目から品質が劣化していると勘違いされてしまいます。トウガラシに含まれるカプサイシンの効果により、血合筋の変色を抑制します。鮮度に見合った黒瀬ぶり本来の血合筋の色を守る性能をこの飼料は備えています。
5.飼料中の魚粉使用量の削減
魚類養殖に必須とされる配合飼料の多くに魚粉が使用されています。主に、南米のペルーやチリで捕獲されたカタクチイワシが原料となっており、日本で使用される魚粉の多くは海外からの輸入に頼っています。主要原産国の漁獲量は、漁期前の資源調査に基づいて漁獲枠が設定され、生産量が制限されます。黒瀬ぶりを育てる飼料もこの魚粉が使用されていますが、天然資源への圧力を軽減するため、飼料中の魚粉配合率低減に取り組んでいます。ブリは肉食性であるため、現段階では魚粉の配合を0にすることは出来ませんが、段階的な削減に取り組むことで、将来さらなる天然資源への圧力緩和に取り組んでいきます。